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一法句 ラハイナ本願寺

八月八日、山火事によってハワイのマウイ島ラハイナの町は、ほぼ全てが焼失しました。この町は私が初めて行った海外の町で、世界で一番好きな所でした。
ラハイナは、一八二〇年代からランプのための油をとるための捕鯨で大きくなり、石油から精製された灯油や電気の普及により捕鯨が衰退した後は、サトウキビの生産によって栄えました。その後はかなり衰退していましたが、一九六〇年代から近くに高級なリゾートがいくつも開発され、歴史的観光地となっていきました。七十メートル四方にも枝と根を広げた一本のバニヤンツリー(ベンガルボダイジュ)が町のシンボルでした。ギャラリーもたくさんあり、日本で有名な画家C・ラッセンもここを拠点に活動していました。彼の絵にはよくラハイナが描かれています。おいしいレストランもたくさんあり、こじんまりとしていながら華やかさもあり、またのんびりした雰囲気もある良い町でした。

その町が一昼夜にして無くなったのです。あまりに火が高温だったため、見つかった遺体から身元が判明出来たのは、八月二十五日現在で半分にも満たないそうです。建物もほとんどが崩れ落ち、まるで爆撃されたかのようです。シンボルだったバニヤンツリーが焼けて白い幹だけが残っている映像を見た時は、涙が出てきました。
もう三十年近く前になりますが、高校三年の二月にこの町で三週間のホームステイをさせていただいたことがあります。たまたまその時、ご縁のあった方がこのラハイナのお寺で僧侶としてお仕事をされており、このご縁となりました。
このラハイナのお寺というのは、浄土真宗のお寺です。日本からの移民された方々は、浄土真宗の門徒さんが多かったそうです。ハワイへの移民は、先ほどのサトウキビ畑などで働くことが多く、このラハイナの近くも多くの日本人の方がつらい労働に耐えて、生活を送っておられたそうです。そのような方々の支えになるようにと、ハワイ全体にたくさんの浄土真宗のお寺が建てられていきましたが、このラハイナにも、一九〇四年ラハイナ本願寺が設立されました。一九三三年(なんと戦前です )には本堂が改築され、入口の両脇に少し背の低い尖塔のある教会のような外観で、中はイス席、内陣は日本の真宗と同じようなつくりの素晴らしい建物になりました。ハワイでもそのようなお寺は少ないと思います。このラハイナ本願寺も、今回の山火事で全て焼け落ちてしまいました。

さて、このホームステイでは本当に色々と学ぶことが多かったのですが、今回は一つのことをお話したいと思います。
たまたま行った時は、特別な記念の年だったらしく特別研修会が開かれました。当時日系人三世の方々は、片言の日本語が混じるくらいでほぼ英語を話されていました。ですので研修会も英語でしたので、ほんとに見てる事しかできませんでしたが、後ろのほうで参加をさせていただきました。
ご講師は歎異抄を英訳された先生で、参加されていたご門徒(メンバーといってました)みんなで講演を聞き、その後班別討論をして、そこで出た意見や質問を最後にご講師にコメントしてもらうというプログラムでした。まぁ現在では日本のお寺の研修会でもよくあるかたちではあります。しかし、参加されているメンバーの方々が、積極的に発言をし、意見を言っているところにビックリしました。メンバーの皆さん全員が、浄土真宗をきちんと学びたい、お念仏を大事にしたい、という様子に衝撃を受けました。
お寺で法座などの行事を行っていると、「分からなくてもいいのだ」「質問をすると教えを疑っているように思われそうなので、疑問があっても口に出さない」などというような雰囲気を感じることがあります。お寺に来てご法話を聞いてさえいれば、いつか救われるのだろうと考えておられるのかもしれません。でも、そうではないのです。

親鸞聖人は、今でいうお寺のことを「念仏の道場」と呼んでおられました。道場というと、剣道や柔道、空手など武道系の道場を思い浮かべます。道場というのは、教える師範も含めてみんなで、武道の研鑽を深め鍛練をかかさないようにして、道を究めようとする所だと思います。師範だけが武術を極めて、そこに通う人たちは何となくやっている、というような道場はないのではないでしょうか。念仏の道場も同じように、住職もご門徒さんもみんなで阿弥陀仏の教えを学び、それをどう受け止めればいいかいつも考えながら、教えと向き合っていく、そのようなところが大切なことなのだと、親鸞聖人はお考えだったのだと思うのです。
そのことをラハイナ本願寺のご縁で知ることができました。そして、将来自分が住職になった時にはお寺をそのようにしたいと、目標ができたのです。住職になって早いもので十年以上たってしまいました。まだまだ目標には遠いですが、少しでも皆さんに、浄土真宗のお寺は「念仏の道場」だということをお伝えし、ご門徒さんみんなと一緒に阿弥陀様の教えを学び、お念仏をよろこぶ場を作っていきたいと思います。

最後にこの度の被災されたラハイナ本願寺やそのメンバー、町の方々に、皆様のご厚意をお願い出来たらと思います。私の個人的な思いでありますが、少しでもご理解ご協力をいただければ幸いです。

合掌



https://www.gofundme.com/f/maui-wildfire-disaster-relief-fund

ハワイの浄土真宗が集めている寄付です。英文ですが、自動翻訳機能などを使っていただければ手順などはご理解いただけるかと思います。

https://www.hongwanji.or.jp/news/cat5/002152.html

浄土真宗本願寺派のたすけあい募金です。継続した被災地の復興支援を目的として、義援金の募集をしています。

https://www.jrc.or.jp/contribute/help/2023hawaii/


こちらは赤十字の寄付です。こちらでも結構です。

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