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一法句 「西方浄土(さいほうじょうど)」

お盆の寺報に載せた前回の一法句で触れた安倍元首相襲撃事件は、大きな波紋を広げており、日本の政治を揺るがしています。犯人のことより、旧統一教会と呼ばれる宗教団体が、政治家に深く関係していることが問題になっていますね。政策や法律にどれくらいその影響があるのか、注意深くみていくべきでしょう。個人的には、あのような活動を宗教活動と思えないので、あの団体を宗教団体と認めたくないところです。
さて、早いもので秋の彼岸となります。何度もお話をしておりますが、この彼岸は「あの世」のことではありません。仏教で彼岸とは覚りの世界をいいます。浄土真宗でいうと、覚りの世界は「浄土」であります。
阿弥陀仏の浄土は「西方浄土」とも言うように、この世界より西のほうにあります。
その「西」というのはどういうことでしょうか?今の科学的な宇宙の理解では、「西」という方角は意味を持ちません。
親鸞聖人が敬愛された方に曇鸞和尚(どんらんかしょう)という方がいらっしゃいます。当時大変勝すぐれた僧として知られていて、その地の王様に仏教を教えていたそうです。ある時その王様が「あなたから、仏教は全てのものは空くうであり、方角などにこだわるものではないと聞いた。ところが、あなたが大切にする阿弥陀仏の浄土が西にあるというのは、それと矛盾するのではないだろうか。」とお尋ねになられたそうです。曇鸞さまは「確かに仏からみれば全ては空でありますが、人間である私では全てのものをそのように受け止めて生きることは出来ません。そんな私に合わせて阿弥陀仏はあえて『西』と定めてくださっているのです。」とお答えになりました。
阿弥陀仏のお救いは、私達人間全てを救う為のお救いです。私たちに合わせてお救いをしつらえてくださっているのです。「西」という方角は太陽の沈む方向です。一日の終わり、またいのちの終わりもイメージされます。西に沈む太陽を見ながら、亡くなった方のことを思い出し、自分のいのちの行く末を考える方向です。そんな西の方向に全てのいのちを救う阿弥陀様の国がありますよ、いのちが終わった人が往くお浄土がありますよ、と私達の心象風景に合わせて、阿弥陀様はお浄土を「西」に定めてくださったのです。
太陽が真西に沈むこの時期に、そのように味わいながらお過ごしいただきたいものです。その為に、阿弥陀仏のお話を聞きにお寺の行事にお越しくださいませ。

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